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 人食い妖怪・ルーミアはある夜森で一人の少年に出会う。人間の恐怖を糧とする妖怪であるルーミアは、いつものように少年を怖がらせようとするが、少年は怖がるどころか「自分を食べてほしい」と言い出すのだった。

 その日から、ルーミアと少年の奇妙な関係がはじまった。

登場キャラクター:

ルーミア

リグル・ナイトバグ

ミスティア・ローレライ

オリキャラ

  最近の幻想郷では妖怪が人間の里で暮らしたりと、人間と妖怪との関係に変化が見え始めている。

 人間に危害を加えない妖怪だったり、人間と一緒に生きる事を望む妖怪が増えてきているのだ。そして人間達もそんな妖怪を自宅に招き入れたり、と、人間と妖怪の距離が随分と近くなっていた。

 ただ、そんな世界になっても人間と妖怪の両者の意識の奥底には消えることのない、幻想郷での重要な役割が大きく分けて二つ程存在している。

 重要と書くと重々しい雰囲気を感じるが、内容はいたってシンプルである。

 『人間は妖怪を恐れる存在である事』

 『妖怪は人間に恐れられる存在である事』

 この二つだ。いかに仲良く、どんなに近くなっても心の奥底にこの感情が存在するからこそ幻想郷と言う世界が成り立つ。外の世界は科学の発展により人間が妖怪を恐れなくなり、その結果妖怪は徐々に力を失っていき、とうとう住めなくなってしまった。

 だからこそ、同じ事を繰り返さないためにも、先の二つは守られなくてはいけない重要な役割である。

 さて、そんな風に妖怪と人間との距離が近くなっている幻想郷でなお、まだ妖怪らしい妖怪も多々存在する。主に人間を食う妖怪達だ。

 ただ、そんな彼らも別に毎日人の肉を欲するわけではない。妖怪を恐れる事を忘れていない人間の住む幻想郷でなら本当の意味で餓える事はない。

 人間が牛肉や豚肉、鳥肉、魚、野菜等々、食べる物を選ぶように彼らの食事の選択肢の中に人間の肉が存在するだけである。

 その妖怪らしい妖怪の中の一人、ルーミアの恐ろしさを語るのならばその無邪気さにあるだろう。

 彼女には悪意がない。妖怪が人を食べるのは当然としている。だから、彼女には命乞いなんて通じない、話をしようとする事がまず間違いだ。食肉として育てている牛や豚に人は同情するだろうか? つまりはそういう感覚なのだ。

  外見は愛らしい少女の姿で、喋り方もどこかフワフワとしていて一見すれば本当にただの子供にしか見えないのに、彼女は人食いで自分の欲望に素直だ。

 だからこそルーミアは怖い。

 そんな彼女が今は、

「もう……、アイツなんなの……?」

 頭を抱えながら、いろいろと崩壊していた。

サンプル

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